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新着情報

ニュースレター「ひとりから、長崎から」第13号(2025.1.31)を配信しました

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編集室水平線のニュースレター「ひとりから、長崎から」第13号(2025.1.31)
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こんにちは。編集室水平線の西浩孝です。
ニュースレター「ひとりから、長崎から」第13号をお届けします。

元旦、生まれ故郷・富山の北日本新聞が、わたしのことを取り上げてください
ました(田尻秀幸記者)。

ひとつの面にまるまるです。今後こんなことはないでしょうね。

以下のページで記事の全文を読むことができますので、ご覧いただければ幸い
です(2025年1月1日号)。
https://www.e-osc.co.jp/hiroba/gallery/index.html

(このレターは、PCで読まれることを想定しているので、スマートフォンでは
読みにくいかもしれません。あらかじめご了承ください。)

(↑これと↓これ、毎回書いていて恐縮ですが、新しく登録していただいた方
のためにそうしています。以前から読んでくださっている方には恐縮です。)

 *****

ニュースレターの内容紹介です。

「新着情報」では、文字どおり、水平線および水平線の刊行物に関する最新の
情報をお知らせします。

「作業日誌+α」は、ニュースレターが隔月配信なので、その2か月のあいだ
にメモした短い記録をいくつか掲載します。「+α」とあるのは、編集作業と
は関係のない記述も含まれているためです。

「海岸線」は、編集人(わたし)による書きものです。そのときに書きたいこ
とを自由に書いていきます。今回のタイトルは「走る」。

「本棚の本」では、水平線(わたし)の本棚にある本を紹介します。これは、
フェイスブック、インスタグラムに投稿しているものと同じです。とくに感想
も解説も付けていないので、なんともそっけないコーナーです。(というか最
近ぜんぜん投稿できていないため(><)、ついさっき選びました(><))

「『雨晴』から」は、オンラインマガジン『雨晴』(suiheisen2017.com)のなか
から、公開済みのひとつを選んで、一部または全部を掲載するものです。今回
は亀山亮さんの連載『戦争』の第14回「戦争のトラウマ(ブルンジ・カメンゲ
精神病院)」です(写真はサイトでご覧ください)。

 *****

それではどうぞご覧ください。

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【新着情報】シリーズ「伊藤明彦の仕事」、長崎新聞ほかで紹介! など
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12月に刊行を開始したシリーズ「伊藤明彦の仕事」第1巻、『未来からの遺言
ある被爆者体験の伝記/シナリオ 被爆太郎伝説』が発売中です(四六判並製カ
バー装/356ページ/本体2200円+税)。

この間、12月15日の長崎新聞(蓑川裕之記者)、1月8日の山陰中央新報・秋
田魁新報(共同配信・西出勇志編集委員)、1月28日の東京新聞(ルポライタ
ー・鎌田慧さん)、1月30日の西日本新聞(作家・青来有一さん)に取り上げ
ていただきました。

〈わたしは遅ればせながら『未来からの遺言』を読み、圧倒させられた。〉
(鎌田さん)

また、小説家の小山田浩子さんも、インスタグラムでご紹介くださいました。

〈すごくおもしろかった。被爆体験を語ること、聞くことについて、読後にち
ょっと放心するような読書体験でした。〉

過去のものですが、TBSラジオ『アフター6ジャンクション2』(通称アトロ
ク)では、ライムスター宇多丸さんと映画ライターのてらさわホークさんが本
書について熱く語っています(2020年11月18日放送)。ぜひ聴いてみてくだ
さい。
https://nhsw9.app.goo.gl/p8shaG67EYwL7xWK6

以下のページ、「本文公開」で第1章を読むことができます。
https://suiheisen2017.jp/product/3763/

 ***

2月に福岡・天神の本屋&カフェ「本のあるところajiro」(運営:書肆侃侃房)
で、シリーズ「伊藤明彦の仕事」について話をする機会をいただきました。
https://note.com/kankanbou_e/n/nacfd57409486

日時:2025年2月13日(木)19:30~20:30(開場:19:00)
出演:西 浩孝(編集室 水平線)
場所:本のあるところ ajiro(福岡市中央区天神3-6-8-1B)
チケット:1100円

ご予約方法:件名を「伊藤明彦の仕事トーク 予約」としていただいた上で、
①お名前と②参加人数をajirobooks@gmail.comにメールにてお送りください。
お支払いは当日にレジにてお受けします。

お問い合わせ:ajirobooks@gmail.com(担当:藤枝大さん)

よろしくお願いします。

 ***

水平線(わたし)が編集した記録作家・川原一之さんの著書『和合の郷 祖母
・傾山系土呂久の環境史』が世織書房から出版されました。

もともとは自費出版として昨年3月に刊行されたものでしたが、好評につき声
がかかり、今回あらためて商業出版されました。

A5判、ハードカバー、584ページの大作です(定価:本体5400円+税)。
ブックデザイン=design POOL(北里俊明+田中智子)、装画=山福朱実。

川原さんの集大成といえるこの本は、土呂久(宮崎県西臼杵郡高千穂町)のみ
ならず、地域史をこれから学び、研究する方々にとって、大いに参考になるに
ちがいありません。また、読みものとして、おもしろいです。

ぜひお買い求めください。
https://seorishobo.com/%e5%88%8a%e8%a1%8c%e6%9b%b8%e7%b1%8d-2/%e5%88%8a%e8%a1%8c%e6%9b%b8%e7%b1%8d/2024-2/%e5%92%8c%e5%90%88%e3%81%ae%e9%83%b7/

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オンラインマガジン『雨晴』を、だいたい週に1回のペースで更新しています。
この間に公開したのは、以下のとおりです。

●姜湖宙『ストライク・ジャム』
第13回「人生(ランチタイム)」
https://suiheisen2017.com/kang-hoju/3332/
●亀山亮『戦争』
第14回「戦争のトラウマ(ブルンジ・カメンゲ精神病院)」
https://suiheisen2017.com/kameyama-ryo/3367/
●諸屋超子『くたばれ』
第14回「貧しさとは何か」
https://suiheisen2017.com/moroya-choko/3378/

オンラインマガジン『雨晴』は、アプリ「編集室 水平線」内で公開しています。
以下のページから、お手持ちのスマートフォンやタブレットに、インストール
をお願いします。
https://suiheisen2017.jp/appli/

『雨晴』はsuiheisen2017.comでも読むことができますが、アプリを入れると、
毎回プッシュ通知で更新情報が届きますので、こちらを推奨しております。

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【作業日誌+α】2024年12月〜2025年1月
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●12月3日(火)
午後1時半、北日本新聞・田尻秀幸記者からZoomにて取材を受ける。「虹」
というヒューマンストーリーの企画で取り上げてくださるとのこと。元旦号に
掲載予定。2時間ほど話して、明日また続き。夕方、関口達夫さんから電話。
「言論ながさき」の会報に「伊藤明彦の仕事」について書かないか。1800字。
18日締切。少ししてまた関口さんから電話。今度は「市民運動ネットワーク長
崎」の会報。1200字。12日締切。お世話になります。

●12月9日(月)
冬は寒い。午前は何もせず。午後1時半、長崎新聞社1階、喫茶「ザ・プレス」。
自分が新聞記者になったようで、気分がいい。コーヒーを頼む。報道部主任・
蓑川裕之さんから取材を受ける。「伊藤明彦の仕事」の企画から刊行までの経
緯などを話す。終了後、歩いてプラットモールのコメダ珈琲店。またコーヒー
を飲む。帰りのバスで、降りるときにピッとしたあと、運転手に深々とお辞儀
をする女性を見た。帰宅後、ちょっとパソコン。カナダの山之内悦子さんから
頂いた愛媛みかんを2個。農家の人が高齢で引退だそう。来年からは食べられ
ない。

●12月11日(水)
「伊藤明彦の仕事1」、事前受注分の発送作業。大変。マスコミ等への献本は
まだ。遅れ遅れ。しばらくポッドキャストをやっていない。

●12月13日(金)
申し込んでいた書泉・三省堂・東京堂3社による能登半島地震復興支援チャリ
ティー企画。能登の工房で製作されたグラスとブックカバーが届く。限定100
セット。全壊した珠洲市の「いろは書店」再建のため。長崎原爆資料館売店、
メトロ書店長崎本店、紀伊國屋書店長崎店へ営業電話。つれない。長崎の編集
者が長崎の著者による長崎原爆にかんする本をつくり長崎の本屋に置いてもら
えないなどということがあってよいのだろうか。

●12月15日(日)〜17日(火)
木村哲也さんと中村寛さんが東京から遊びに来てくれた。中村さんとは8年ぶ
り。初日、新地中華街で待ち合わせ。目的の店に入れず、不本意なちゃんぽん
と皿うどんを食べる。長崎市歴史民俗資料館、ひとやすみ書店、カリオモンズ
コーヒーロースターを回って、夜はいけ洲居酒屋むつ五郎。運転手なのでノン
アル。さみしいので4瓶。二日目、長崎港で待ち合わせ。7時40分発ジェット
フォイルで奈良尾へ。五島うどんの「虎屋」で昼食。グッドデザイン賞フォー
カスイシュー・リサーチャーである中村さんが言う。外装・内装とも「グッド
デザイン」。最北端の津和崎灯台まで行って戻って有川。鯨のまち。宮本常一
がかつて見たのとおなじ景色を見ることができて感動。若松島の橋口旅館に一
泊。渋くて気に入った。リピートしたい。最終日、9時15分発のフェリーで帰
る。甲板に出て、陽に照らされたうつくしい海をながめたあと、寝ているあい
だに着いた。アミュプラザのブルズキッチンで佐世保バーガーとレモンステー
キ。歩いて長崎人権平和資料館。駅でお別れ。

●12月19日(木)
北海道砂川市「いわた書店」の「一万円選書」。有名らしく、いままで知らな
かったのが恥ずかしい。試しに申し込んでみた。「選書カルテ」が後日届くと
のメール。

●12月22日(日)
佐賀の忍者村に行ってきたでござる。にんにん。

●12月26日(木)
午後、ひとやすみ書店に納品。店主の城下康明さんとお話。長居。注文してあ
った新澤克憲『同じ月を見あげて ハーモニーで出会った人たち』(道和書院、
2024)を購入。『けーし風』120号の取り寄せをお願いする。終刊。掲載の総
目次(創刊号〜119号)が貴重。

●12月27日(金)
なんと仕事場に大学生が本を買いに来てくれた。ありがとう!

●12月28日(金)
14時、難波稔典さんとオンライン。NPO法人「被爆者の声」でやるべきこと
のもろもろを確認。来月下旬に二人で長崎原爆死没者追悼平和祈念館を訪ねる
ことにする。注文していた小林エリカ『女の子たち風船爆弾をつくる』(文藝
春秋、2024)、南陀楼綾繁『書庫をあるく アーカイブの隠れた魅力』(皓星
社、2024)、佐藤翔『図書館を学問する なぜ図書館の本棚はいっぱいになら
ないのか』(青弓社、2024)が届く。現代ビジネスの記事「人は眠らなかった
らどうなるか…「11日間断眠」した“命がけの実験”でわかった「意外なこと」」。
やば。

●12月30日(月)〜1月5日(日)
年末年始休暇。買ったままだった金原ひとみの短編集『アンソーシャル ディス
タンス』(新潮文庫、2024、解説=朝井リョウ、谷崎潤一郎賞受賞作)を読み
はじめる。「ストロングゼロ」で早くも夢中。元旦の北日本新聞に自分の全面
記事が載った。見た友人Oからメッセージが来る。NHKで能登半島地震1年の
特集番組。あまりにもつらかったのでチャンネルを替えた。Oも妻の珠洲の実
家で被災したという。年賀状をやっと書く。

●1月10日(金)
起きたら外に雪。うっすらと積もっている。ブレーカーが落ちた。午前、いま
だに献本作業。クリックポストのマイページでひたすら送付先の入力。午後、
チラシ配布に協力してくれる人があり、長崎駅近くのビルの一室へ向かう。100
枚超。帰宅後、録画してあったEテレ『100分de名著』(阪神・淡路大震災30
年「心の傷を癒すということ」を読む/第一回)を見る。指南役は宮地尚子先
生。『増補新版 傷を愛せるか』(ちくま文庫)は13刷で4万部らしい。ふと
んに入って『正午派2025』(小学館文庫、2025)。「佐世保駅7番ホーム」を
読んで、そのあと携帯でアニメ『呪術廻戦』。真人(まひと)がほんとうに気
持ち悪い。

●1月14日(火)
読売新聞「拡大抑止指針に、アメリカの核使用時「意思疎通」…中谷防衛相認
める」。産経新聞「「自爆ドローン」310機導入へ 令和8年度に陸自、イス
ラエル製など候補」。沖縄タイムス「大浦湾側投入3万立方メートル 新基地
土量 辺野古側含め計画の16%」。

●1月18日(土)
著名人に献本アタック。美輪明宏、福山雅治、さだまさし、長濱ねる(以上、
長崎出身)、浜田省吾(広島出身)、黒柳徹子、吉永小百合、綾瀬はるか、是
枝裕和、エトセトラ。「恐れることはない。ただ信じなさい」(マルコによる
福音書5:36)。爪を切った。夜、眼鏡橋のプリムローズで共同通信の西出勇
志さんと食事。最終バスで帰宅。

●1月20日(月)
12時半、原爆資料館ピースカフェにて難波稔典さんと関口達夫さんと打ち合わ
せ。14時、難波さんと二人で追悼平和祈念館へ。館長、副館長らと面会。伊藤
明彦さん寄贈資料に関する覚書の再締結についての話し合い。圧がすごい。以
前ここでブチ切れたことがあるので、おとなしく。伊藤さんが使っていたオー
プンリールデッキと録音テープのケースを見せてもらう。ちょっと泣きそうに
なった。またピースカフェに戻って、閉店の17時まで。明日も難波さんと会う
ことにする。

●1月27日(月)
雨。くるりを聴きながら、ゆうちょ銀行から来ていたがめんどくさくて放置し
ていた「預金情報の整備へのご協力のお願い」を処理。NPO法人管理運営説明
会に参加予約。天笠啓祐さんに何冊も本を買ってもらったのでお礼の手紙を書
く。ホチキスの芯が無くなったので新しいのを入れようとして苦戦する。姜湖
宙さんに昨日の夜に読んだ詩5篇への感想をメールで送った。午後、市政記者
室に電話。記者会見の設定を頼む。2月5日(水)14時に決まる。久しぶりに
Kさんから電話。来月下旬に会う約束をする。書店営業が本当につらい。

●1月29日(水)
朝、郵便局。家にもどって雑務をこなす。午後いち、くまざわ書店佐世保店か
ら受注。JRCにメール。西尾漠さんに電話。『極私的原子力用語辞典』の出版
について相談。夜、NHK『クローズアップ現代』、「「私が社会を変える」Z
世代を魅了する歌手“ちゃんみな”の闘い」を見る。言葉に力がある。「世界終
末時計」、残り89秒。

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【海岸線-11】走る
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スキップ、スキップ、ダッシュ! 子どもたちがいっせいに広場へと駆けだし
ていく。わたしはそれをぼんやりと眺める。ベンチ、遊具、空をあおぐ。

陸上部だった。専門は短距離。中学時代、部活の時間が来るのをいまや遅しと
待ちわびていた。授業中は教室の窓から見える景色を、頰杖をついたりして眺
めて過ごした。

あのころは風をきって走るのが単純にたのしかった。練習のはじめにはアップ
があり、終わりにはかならずダウンがあって、というあの流れ。ドリルとかラ
ダーとかの、動くことで身体の輪郭がくっきりするあの感じが好きだった。ス
ターターでピストルを撃つスリルも、ほかの部では味わえないものだった。

高校でも陸上をつづけた。1年のときからリレーのメンバーに選ばれた。県大
は優勝した。京都インターハイにも出た。2年、3年は伸び悩んだ。かつて相手
にならなかった他校の人間に負けるのは屈辱だった。追い風2メートルで出し
た11秒20が最後にして最高の記録だった。

大学ではやめた。一人で、ときどき夜に走った。暗闇の中では、自分はだれよ
りも速かった。

いつのまにか走らなくなった。

わたしはまた子どもたちをぼんやりと眺める。わたしも走りたいと思う。その
気になれば、また走りだせるだろう。

(了)

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【本棚の本】ギブソン『生態学的視覚論』 ほか
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●J.J.ギブソン『生態学的視覚論 ヒトの知覚世界を探る』古崎敬ほか訳、
サイエンス社、1985年

●プラムディヤ・アナンタ・トゥール『プラムディヤ選集7 ガラスの家』押
川典昭訳、めこん、2007年

●アンナ・ポリトコフスカヤ『チェチェン やめられない戦争』三浦みどり訳、
NHK出版、2004年

●マリーズ・コンデ『心は泣いたり笑ったり マリーズ・コンデの少女時代』
くぼたのぞみ訳、青土社、2002年

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【『雨晴』から】
亀山亮『戦争』第14回「戦争のトラウマ(ブルンジ・カメンゲ精神病院)」
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ブルンジにある唯一あるカメンゲ精神病院は中央を挟んで男女別の病棟に戦争
による直接、間接的な被害を受けた数十人の患者が収容されている。

60年代から続いたツチ、フツ族の争いはドイツ、ベルギーの傀儡政権によって
激化。

狭い国土の中で同じ国民として生きてきた普通の人達が民族の違いを理由に棒
や石などの原始的な武器を手に殺しあった。

その結果、ブルンジと隣国ルワンダでは100万人以上の犠牲者がでた。

政治が民族を利用した結果、人々に猜疑心、恐怖を植え付け不信と混乱が人間
の狂気を引き出した。

「自分の両親を兵士に殺させた隣人に復讐したかった」オスカル(25)はすべ
ての力を使い果たしたかの様に疲れきった表情で話した。

ブルンジは隣の国ルワンダと同じく、ツチ族、フツ族の2つの民族が昔から一
緒に暮してきた。

ドイツやベルギーの植民地支配者たちが2つの国を支配して以来、支配者たち
は自分たちに不満の矛先が向かないようにするために少数派のツチ族と多数派
のフツ族をお互いに憎みあうように巧妙に仕向けた。

オスカルはフツ人の父親とツチ人の母親の間に生まれた。

村にはフツ人が多く住んでいた。母親はツチ人という理由だけで敵のスパイで
はないかといつも住民やフツ系反政府軍の兵士たちに疑われていた。

「兵士や村人たちに母親を差し出せと何度、無理強いされても、父は母を家の
中に隠して断り続けていた」

「ある日、隣の家の男がドアをノックした。安心してドアを開けると兵士が家
の中になだれ込んできた」

「逃げ遅れた両親と弟と姉はその場で殺された。ほかの村人たちは兵士たちを
恐れて誰も助けてくれなかった」

事件の後、オスカルは残った3人の弟を育てていくため大学進学をあきらめて
畑で働くようになった。

「両親が死んでから生活がとても苦しくなった。自分たちを騙して家族を兵士
に殺させた隣人を見る度に『殺したい』と思う様になった」

「村の中を通りがかった時、自分の父親が殺されて『嬉しい』と男が他の村人
と笑いながら話をしているのを聞いた瞬間に無我夢中で家に置いてあったナイ
フと槍を持ち出して男に襲いかかっていた」

オスカルはその場にいた村人と弟たちによって取り押さえられ首都ブジュンブ
ラにあるカメンゲ精神病院へ運びこまれた。

彼の腕には村人たちにロープで強く縛られた時にできた痛々しい傷が残ってい
た。

「自分たちが生きている間、彼らと一緒に生活していかなければいけないのな
らば決して赦すことはできないけれど彼らの存在を認めていくしかない」とオ
スカルは言う。

治療費を払わないと退院することはできないオスカルは数日後の夜、病院の高
い塀を乗り越えて脱走した。

(アプリ「編集室 水平線」のインストールは、以下のURLからお願いします。)
https://suiheisen2017.jp/appli/

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お読みいただき、どうもありがとうございました。

よろしければ、友人・知人のみなさまに、このニュースレターの存在を知らせ
ていただけましたら幸いです。

編集室 水平線(発行人=西 浩孝)
〒852-8065 長崎市横尾1丁目7-19
Website: https://suiheisen2017.jp/

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