内容紹介
目次
著者略歴
第8回日本詩人クラブ詩界賞受賞作の増補新版。
「人間性という語の本来の、もし語が生き物であるならば、語としての“人間性”の生き方はけっして暴力をさきだてることになく、そうではなくて何らかの人間的努力により、暴力による解決を乗り越え、あるいは攻撃の回避をもくろみ実現しようとする、つよい思想のうちにあるのでなければならないのではないか。非人間性という語を対極に置くためには、人間性を確立させなければならない。人間性は解決や回避の努力が産んできた思想のほうにあるのではないか。/世界史にしろ(東洋史を含む)、日本史にしろ、歴史の教科書や叙述に見ると、戦争につぐ戦争によって世界がかたちづくられていったかのように見えるために、もしかしたら大いなる誤解がそこに生じている。若い国や強大国にとっては、十年に一度か戦争を起こすことによって、歴史に名をのこす国になれるかもしれないという幻想が生じる。歴史を学ぶ高校生たちは、戦争をなくてはならない必要悪であるかのように思い込むかもしれない。ちがうのではないか。もしかしたら戦争を回避したり、非戦の思想を産み出したり、あるいはぜんぜん戦争らしき戦争のなかったりする、長い時間や国や地方をめぐっても歴史は叙述できるのであり、そうした非戦やさらには“無戦”をも歴史に組み込むことが構想されるべきではないのか。」(本文より)
戦争の起源と、それの現在と、今後のわれわれが何をしなければならないかという、日ごろだれもが知りたいと思い、なかなか解答を得られない内容について、言葉にたずさわる者としての責任の限りにおいて、著者は本書を著した。
「人間性という語の本来の、もし語が生き物であるならば、語としての“人間性”の生き方はけっして暴力をさきだてることになく、そうではなくて何らかの人間的努力により、暴力による解決を乗り越え、あるいは攻撃の回避をもくろみ実現しようとする、つよい思想のうちにあるのでなければならないのではないか。非人間性という語を対極に置くためには、人間性を確立させなければならない。人間性は解決や回避の努力が産んできた思想のほうにあるのではないか。/世界史にしろ(東洋史を含む)、日本史にしろ、歴史の教科書や叙述に見ると、戦争につぐ戦争によって世界がかたちづくられていったかのように見えるために、もしかしたら大いなる誤解がそこに生じている。若い国や強大国にとっては、十年に一度か戦争を起こすことによって、歴史に名をのこす国になれるかもしれないという幻想が生じる。歴史を学ぶ高校生たちは、戦争をなくてはならない必要悪であるかのように思い込むかもしれない。ちがうのではないか。もしかしたら戦争を回避したり、非戦の思想を産み出したり、あるいはぜんぜん戦争らしき戦争のなかったりする、長い時間や国や地方をめぐっても歴史は叙述できるのであり、そうした非戦やさらには“無戦”をも歴史に組み込むことが構想されるべきではないのか。」(本文より)
戦争の起源と、それの現在と、今後のわれわれが何をしなければならないかという、日ごろだれもが知りたいと思い、なかなか解答を得られない内容について、言葉にたずさわる者としての責任の限りにおいて、著者は本書を著した。
詩織
砂に神の誘い子を置く
Ⅰ 言葉と戦争
言葉と戦争
一 戦争——記憶する未来
Ⅱ 詩のするしごと
教科書、戦争、表現
一 問題の在りか、定義
二 「いじめ」、そして銃(よさらば)
三 『平家物語』、叙事詩という教材
四 サブカルチュアと「反戦」
五 《民族》は超えられるか、詩の敗北か
詩のするしごと
一 定型からの距離
二 言語の族の複数
三 「民族」と「言語」とを超える
四 現代詩のジレンマ(自縺麻)
五 言語の批判
日本語の境域——言語の〈エスニシティー〉試論
Ⅲ Eメール往復書簡(ハルオ・シラネ/藤井貞和)
カノン、カウンターカノン
Ⅳ 物語問題片
物語は解き明かされたか
シ(ー)ディ(ー)カ
ほんとうの物語敗北史とは
ほんの二〇分まえ、イラクが戦争を中止するというニュースがあった
Ⅴ アジア、社会、個人
戦争責任論争と問題点
一 告発以後
二 比喩の途
三 問題点二、三
思想はるか
一 大衆のナショナル・ヒストリー
二 丁寧語文体、非対称性
三 語りの構造
四 ゼロという人称、無人称
五 作者はかたるか
フィリピン史研究者
大地の幻に対す——あるいは日本一九三六〜四〇年代戦争と読者
時代の写し絵——あるいは日本一九三六〜四〇年代戦争と読者(続)
日本社会の〈うたとは何か〉
一 殺される女性たちの辞世
二 『志士詩歌集』その他
三 辞世に見る〈うたとは何か〉
四 『この果てに君ある如く』
Ⅵ 心の風景
心の風景
敗戦/祖父
Ⅶ 増補
「文学の言葉」と「非戦の言葉」
一 鮎川信夫の生誕地を訪う、および田村隆一の詩
二 『鮎川信夫戦中手記』『疑似現実の神話はがし』
三 平野三郎文書、パリ不戦条約、戦争の放棄
四 日本国憲法制定、「憲法研究会」
五 非戦の思想とは
「黒雲」考
旧版(大月書店刊)あとがき
増補新版へのあとがき
初出一覧
「湾岸戦争論」「戦争から憲法へ」細項
索引(人名・文献・戦争など)
砂に神の誘い子を置く
Ⅰ 言葉と戦争
言葉と戦争
一 戦争——記憶する未来
「特集=戦争」/生物学的考察/攻撃本能という説/フロイト批判の誤解とは/「戦争の起源」対談/狩り=暴力、攻撃性?/本能よりは学習がだいじ?/戦争と法とのかかわり/違法行為は止められるか/野獣あいてに戦う行為は野獣であってよいか/市民の立場に立つとは/テロリズムという原罪
二 非人間性の考察非人間性の限界/『生きてゐる兵隊』/人間性の科学は成り立つか/靖国祭祀と戦争/靖国神社臨時大祭/霊魂のゆくえ/戦死とはどうすることか/戦場における殺人と被殺/銃後の酔いしれる幻想群/不可避性とは/身体論としての人類祖型/人身犠牲の分かりにくさ/人身犠牲と狩猟とはここがちがう/火の起源、料理の起源、近親相姦、戦争の物語/戦争の問題と医療の問題/戦争変形菌
三 終わりを持続させるためにリアリズムとは/「他国が攻めてくる」、えっ?/不戦条約の〝戦争の放棄〟/永遠平和のために?/ポツダム宣言受諾/議論を尽くすべき憲法/国民主権と基本的人権/冷戦のもたらした真の悲劇/時、それは持続の哲学/基地、女性、子供たち/ヴェトナム戦争のかげ/憎悪を超えるため/第二次湾岸戦争(イラク戦争)/言葉という行為、言葉による行為/終わりの終わり—本章のとじめに
Ⅱ 詩のするしごと
教科書、戦争、表現
一 問題の在りか、定義
二 「いじめ」、そして銃(よさらば)
三 『平家物語』、叙事詩という教材
四 サブカルチュアと「反戦」
五 《民族》は超えられるか、詩の敗北か
詩のするしごと
一 定型からの距離
二 言語の族の複数
三 「民族」と「言語」とを超える
四 現代詩のジレンマ(自縺麻)
五 言語の批判
日本語の境域——言語の〈エスニシティー〉試論
Ⅲ Eメール往復書簡(ハルオ・シラネ/藤井貞和)
カノン、カウンターカノン
ニューヨーク—東京—ニューヨーク—トリチュール—チェンナイ—シンガポール—プラハ—東京—ウィーン—東京—東京—原州—江陵—ソウル
Ⅳ 物語問題片
物語は解き明かされたか
シ(ー)ディ(ー)カ
ほんとうの物語敗北史とは
ほんの二〇分まえ、イラクが戦争を中止するというニュースがあった
Ⅴ アジア、社会、個人
戦争責任論争と問題点
一 告発以後
二 比喩の途
三 問題点二、三
思想はるか
一 大衆のナショナル・ヒストリー
二 丁寧語文体、非対称性
三 語りの構造
四 ゼロという人称、無人称
五 作者はかたるか
フィリピン史研究者
大地の幻に対す——あるいは日本一九三六〜四〇年代戦争と読者
時代の写し絵——あるいは日本一九三六〜四〇年代戦争と読者(続)
日本社会の〈うたとは何か〉
一 殺される女性たちの辞世
二 『志士詩歌集』その他
三 辞世に見る〈うたとは何か〉
四 『この果てに君ある如く』
Ⅵ 心の風景
心の風景
敗戦/祖父
Ⅶ 増補
「文学の言葉」と「非戦の言葉」
一 鮎川信夫の生誕地を訪う、および田村隆一の詩
二 『鮎川信夫戦中手記』『疑似現実の神話はがし』
三 平野三郎文書、パリ不戦条約、戦争の放棄
四 日本国憲法制定、「憲法研究会」
五 非戦の思想とは
「黒雲」考
旧版(大月書店刊)あとがき
増補新版へのあとがき
初出一覧
「湾岸戦争論」「戦争から憲法へ」細項
索引(人名・文献・戦争など)
藤井貞和(ふじい・さだかず)
1942年(昭和17)、東京都文京区の生まれ。疎開先は奈良市内。その後、都杉並区に移る。東京大学文学部国文学科を卒業する。『物語文学成立史』(東京大学出版会、1987)、『源氏物語論』(岩波書店、2000、角川源義賞)、『平安物語叙述論』(東京大学出版会、2001)が物語三部作。詩作品書『地名は地面へ帰れ』(永井出版企画、1972)、詩集『乱暴な大洪水』(思潮社、1976)以下、詩作と研究・評論とが半ばする。1992〜93年、ニューヨークに滞在する。『湾岸戦争論』(河出書房新社、1994)、『言葉と戦争』(大月書店、2007、日本詩人クラブ詩界賞)、『非戦へ』(編集室水平線、2018)が戦争三部作。『水素よ、炉心露出の詩』(大月書店、2013)は副題「三月十一日のために」。2011.3.11のあと、『日本文学源流史』(青土社)、『〈うた〉起源考』(同、毎日出版文化賞)、『物語史の起動』(同)の三部作、『文法的詩学』(笠間書院)ほか古典文法論に打ち込む。沖縄文学論の『甦る詩学』(まろうど社)は伊波普猷賞。最近の詩集では『よく聞きなさい、すぐにここを出るのです。』(思潮社、2022)が読売文学賞、日本芸術院賞。『物語論』(講談社学術文庫、2022)、『日本近代詩語』(文化科学高等研究院出版局、2023)、『〈うた〉の空間、詩の時間』(三弥井書店、2023)は新しい。
1942年(昭和17)、東京都文京区の生まれ。疎開先は奈良市内。その後、都杉並区に移る。東京大学文学部国文学科を卒業する。『物語文学成立史』(東京大学出版会、1987)、『源氏物語論』(岩波書店、2000、角川源義賞)、『平安物語叙述論』(東京大学出版会、2001)が物語三部作。詩作品書『地名は地面へ帰れ』(永井出版企画、1972)、詩集『乱暴な大洪水』(思潮社、1976)以下、詩作と研究・評論とが半ばする。1992〜93年、ニューヨークに滞在する。『湾岸戦争論』(河出書房新社、1994)、『言葉と戦争』(大月書店、2007、日本詩人クラブ詩界賞)、『非戦へ』(編集室水平線、2018)が戦争三部作。『水素よ、炉心露出の詩』(大月書店、2013)は副題「三月十一日のために」。2011.3.11のあと、『日本文学源流史』(青土社)、『〈うた〉起源考』(同、毎日出版文化賞)、『物語史の起動』(同)の三部作、『文法的詩学』(笠間書院)ほか古典文法論に打ち込む。沖縄文学論の『甦る詩学』(まろうど社)は伊波普猷賞。最近の詩集では『よく聞きなさい、すぐにここを出るのです。』(思潮社、2022)が読売文学賞、日本芸術院賞。『物語論』(講談社学術文庫、2022)、『日本近代詩語』(文化科学高等研究院出版局、2023)、『〈うた〉の空間、詩の時間』(三弥井書店、2023)は新しい。