内容紹介
目次
著者略歴
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前作『遠い声がする 渋谷直人評論集』と対をなす一冊。1956年と62年の未発表原稿、2020年の書き下ろし、その他1960年代から90年代まで書き継がれた詩・小説・散文、全21篇。〈人生は“受難”(パッション)に過ぎないのか〉。実存をかけた全身の問いが、ここにある。
「たしかに、歴史は巨視的に、発展するのでもあろうし、個々人には、その人なりの、公的使命や、たつきの任務もあろう。/しかし、人はそれのみでは生きないし、おのがじしの性癖やら趣味などによっても生きる。つまりは人は実存の生を歩ゆむ。况して宿命のような個性を抱えた者は、それによって生活を宿命づけられる。〔中略〕天皇制国家の権力と、独占資本の利益の結託は明らかだとしても、それへ立ち向う勢力は、決して強力だったとは言えず、むしろ、日々のたつきの途につくことで必死であったろう。私自身もその一員であり、やがて定職についたからとて、それに変わりはなかった。/ただ、おのれ自身の内奥の声におのずからにして從う習癖が身につく、即ち「実存」する生を、人は生きるのだ。/私の場合、それは「詩」のようなものであり、ここに掲げた感慨のようなものだ。/ただし、ひ弱で、傷つきやすい私のそれは、他の人びとの参考たり得るか否かは、分らない。私は私の実存を必死に生きたと、言おう」(本文より)
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ふさわしからざる巻頭言
Ⅰ
牡丹と春雷
小兄さん
風と蛹と わが戦後
若き日の断章
幻想の街で
夢魔Ⅰ
夢魔Ⅱ
夢魔Ⅲ 地獄谷
林間幻想
秋の断想・二篇
散文詩・二題
Ⅱ
富士山行
冬山行 奥多摩 川苔山から高水三山へ
Ⅲ
夜叉神峠へ
夕暮れの走者
詩一つ
川に魚を見たり
鳥と魚のいる風景
Ⅳ
家さ 帰ろうよう 人生の終末期を迎えて
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渋谷直人(しぶや・なおと)
1926年生まれ。1945年8月、日本海軍(内地分遣隊)から復員。故郷・山形県米沢市へ帰還した日、父死す。次兄はフィリピン・レイテ島、カンキポット山で戦死。早稲田大学教育学部卒業。東京都豊島区東長崎に住み、詩人・大江満雄の知遇を得る。この頃、文芸誌『存在』『氷河』同人。川崎市立中学校教諭を経歴。『秧鶏』『風嘯』等に詩や小説、評論を発表してきた。著書に『鳥と魚のいる風景』(近代文藝社、1982年)、『大江満雄論 転形期・思想詩人の肖像』(大月書店、2008年)、『遠い声がする 渋谷直人評論集』(編集室水平線、2017年)、編書に『大江満雄集 詩と評論』(共編、思想の科学社、1996年)がある。
※略歴は刊行時あるいは増刷時のものです。
書評・紹介記事一覧
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